第3回 プラークの話 〜その1 プラーク(歯垢)の正体は?〜

新潟大学歯学部 野杁由一郎

歯をみがくのはなぜでしょうか? 
答えは、デンタルプラーク(歯垢)を取り除くためです。
では、なぜデンタルプラークを取り除く必要があるのでしょうか?
その答えを導くには、デンタルプラークの正体を知る必要があります。

プラーク(plaque)の語源は「塊(かたまり)」です。従来、歯にかかわるプラークは「デンタルプラーク(歯垢)」と呼ばれてきました。では、この歯の表面や歯と歯の間(歯間)にできる「塊」は何で出来上がっているでしょうか。実は、あるものが固まったものです。

よくある勘違いは、デンタルプラークと食べカスは同じ…というものです。
これは間違いです。デンタルプラークは食べカスではありません。
余談ですが、食べカスは食べ物ですので、それ自体に病原性はなく、ブラッシングなどで除去する必要がないように思われます。しかし、歯を守るためには、それらもきちんと除去しなくてはなりません(この説明は次回にゆずります)。

話を元に戻しましょう。

デンタルプラークは何から出来上がっているか?
実は、細菌から出来上がっているのです。歯の表面にあるヌメリのような塊の正体は主に細菌です。

電子顕微鏡(SEM〈走査型電子顕微鏡〉)でプラークを拡大して見ると、おびただしい数の細菌がそこにいることがわかります。

一つの細菌の大きさが1マイクロメートルだとすると、50マイクロメートル(0.05ミリメートル)のプラークでは細菌が50層も積み重なっていることになります。